筋肉への作用と、歯ぎしりへの効果は分けて考えます
ボツリヌス毒素製剤は、神経から筋肉への伝達を抑え、筋肉の活動を弱める注射薬です。咬筋などへの注射で症状の軽減を目指す場合がありますが、歯ぎしりが必ずなくなるわけではありません。すり減った歯や割れた歯を修復する作用もないため、歯そのものの治療は別に検討します。
顎の痛みには、筋肉、関節、歯の病気など複数の原因があります。診察では痛む場所と時間帯、歯や被せ物の状態、生活の変化などを確認します。朝の顎のだるさや、舌・頬についた歯の跡だけで、歯ぎしりの程度を正確に判断することはできません。
歯ぎしりや食いしばりへの対応には、日中の歯の接触習慣の見直し、生活・睡眠の確認、歯を保護する装置などがあります。顎関節症に対するボツリヌス毒素の有効性は十分に確立していません。装置で改善しない場合も、注射を追加する前に、診断や装置の適合、ほかの痛みの原因を見直す必要があります。
製品名と、今回の使用目的が承認範囲に含まれるかを確認します
医薬品には、製品ごとに承認された効能や用法があります。2026年8月更新のPMDA資料では、ボトックスビスタについて「65歳未満の成人における咬筋膨隆」の適応が確認できます。ただし、咬筋膨隆への承認があることと、歯ぎしりや顎関節症を目的とした使用が承認されていることは同じではありません。使用する製品と治療目的を、最新の情報で確認してください。
適応外使用や国内未承認製剤を提案された場合は、その理由、代わりの治療、安全性、入手経路、費用、副作用への対応について説明を受けましょう。国内承認の有無、保険が使えるか、自分に適しているかは、それぞれ別の確認事項です。価格や投与単位だけで比較せず、製剤が異なる場合は単位を同じものとして扱えないことにも注意します。
希望する効果が、歯の保護なのか、顎の痛みの軽減なのか、見た目の変化なのかを具体的に伝えてください。医院ごとの使用製剤や対応状況は個別に確認が必要です。説明書や同意書で不明な点を確認し、納得してから判断しましょう。
治療歴・服薬・妊娠の予定を伝え、副作用に備えます
持病や薬に加え、ほかの施設で受けたボツリヌス毒素の治療歴を必ず伝えてください。美容目的の注射も含め、製品名、部位、施術日が分かる資料を用意します。妊娠中・授乳中の方、妊娠の可能性や予定がある方、神経や筋肉の病気、呼吸・飲み込みの問題がある方は、治療前の確認が特に重要です。
お薬手帳に載らない薬やサプリメントも申告し、自分で薬を止めたり量を変えたりしないでください。妊娠を希望する場合の注意期間などは、使用製剤の最新の案内に沿って確認します。パートナーの妊娠予定が関わる場合も含め、治療前に相談しましょう。
注射部位の痛み、内出血、腫れのほか、噛む力の低下、違和感、表情や左右差の変化などが起こる可能性があります。飲み込みにくさ、息苦しさ、広範な筋力低下は速やかな医療相談が必要な症状です。呼吸が苦しい場合は緊急の対応を求めてください。施術時間や針の細さだけで安全性を判断せず、治療後の連絡先を確認しておきます。
効果と副作用を確認し、継続するかを判断します
注射前に困っていた症状を記録しておくと、治療後の変化を確かめやすくなります。起床時の顎の疲れ、食事のときの痛み、日中の食いしばりなどを振り返り、食べにくさや話しにくさが新たに出ていないかも確認します。歯や被せ物の保護が目的であれば、その状態の継続的な診察も必要です。
効果の出方や持続期間には個人差があります。変化が乏しい場合は、回数や量を増やす前に、診断や治療目標を再検討します。追加投与の時期と量は製品情報や状態に基づいて医療者が判断するため、予定に合わせて短い間隔で繰り返さないようにしてください。複数の施設を利用する場合も、治療歴を共有します。
注射を受けた後も、必要に応じて生活習慣への対応や装置の調整を続けます。むし歯・歯周病の治療や毎日の清掃も欠かせません。どの処置がどの症状に役立ったか、副作用がなかったかを確認し、継続する利益と負担を相談しましょう。
札幌市豊平区・南平岸で受診をご希望の方へ
日本歯科豊平は、地下鉄南北線の南平岸駅から徒歩1分、札幌市豊平区平岸4条14丁目の歯科医院です。専用駐車場は3台です。お車をご利用の方は、駐車方法や満車時の対応を事前にお問い合わせください。
持病や服用中のお薬、医科での検査結果がある方は、予約時にお知らせください。診療内容によっては、かかりつけ医への確認や専門の医療機関への紹介が必要です。
よくあるご質問
咬筋への注射は、すべて国内未承認の治療ですか?
製品と目的によって異なります。ボトックスビスタには65歳未満の成人の咬筋膨隆に対する適応がありますが、歯ぎしりや顎関節症への使用とは区別して確認する必要があります。
ほかの施設で受けた美容目的の注射も伝える必要がありますか?
必要です。製品名、注射した部位、施術日を伝えてください。異なる施設での治療歴も含めて確認することが、重複投与などを避けるために重要です。
参考情報

日本歯科グループ代表
早川 好昭